FUTURETRON RECYCLER リリース記念 インタビュー 02
~ galcid & 齋藤久師 ~

 

吉野  : 今回は、FUTURETRON RECYCLERの参加バンドにインタビューする、と言う企画での記念すべき第1回に、Nitzer Ebbの「Let your body lern」のカヴァーで参加して下さったgalcidが快諾して頂き、嬉しく思います。
このインタビューの参加者ですが、アルバムの参加アーティスト決定、曲順決定などなどを行った、私こと吉野太郎と、後、アルバムでマスタリングエンジニアを務めてくださった田中友直さん、斎藤久師さんと、galcidのLenaさんですね。 正直な所、galcidの音楽・音響・機材・録音手法をお聞きするのに、僕では知識も話の技量も不足していると感じましたので、無理をお願いして田中さんに御参加して頂きました。
僕とLenaさんはアルバムのライナーを読めばお解りかと思い ますが、斎藤さんと田中さんに自己紹介頂けたら、と思います。斎藤さんはソロでも有名なんですが、galcidとの関係などなど、についてご説明頂ければ、この楽曲の全体像が見えやすくなると思います。まず斎藤さん、お願いできますでしょうか? 。
 
 

<シンセを触らせたら「ソレやっちゃダメ」って事しかしなくて面白かったので (齋藤)>

 
齋藤  : 齋藤久師です。「齋藤です」w。「斉藤」でも「斎藤」でも「齊藤」でもなければ、「齋藤」ですw。galcidのプロデュースをやっている齋藤久師です。LenaがNYから帰ってきてからの付き合いです。彼女は、もともとヴォーカ リストでしたが、シンセを触らせたら「ソレやっちゃダメ」って事しかしなくて面白かったのでプロデュースさせてもらっています。
吉野  : いきなり苗字表記間違えて申し訳ありませんでした。さて、齋藤さん。 「それやっちゃダメ」って具体的にどんな事ですか? 興味あります!
齋藤  : ボクなんかは、もう何十年もシンセサイザー触ってるから、惰性で指が動いちゃうじゃないですか。でも彼女は、そうじゃない。 エンベロープの使い方にしても、切りすぎて音にならない。でもプチプチいってる。それが良いんですよね。発振をさせすぎたり、リズムにしても、 ボクらが想像もつかないような変なリズムを打つんですよ。
例えば、キックなんか、 頭にあった方がいいでしょ? でも、そうしないのがLenaなんです。リミッター が最初から頭に搭載されていないんです。だから、長年シンセいじっている人より自由なんです。 お笑いで言えば、ボケがうまいというか。全く想像もつかない音をつくっちゃうんですね。掟が無い分、自由なんです。
吉野  : 何となく解ります。シンセを長年いじってると、知らず知らずのうちに 何か「これをやっちゃダメ」とかありますよね。
ついついVCFの発振を穏やかにする、とか。しかも今、齋藤さんとLenaさんの愛機はモジュラー。これ、先入観で禁じ手を自分の中で作っちゃいそうですよね。そんな感じでしょうか?
齋藤  : いや、思い切り感覚でイキますね。たとえばDX7ってFMシンセがありましたが、当時、FMで良い音を作ろうとしたのが楽器メーカーですよね。
しかし、ボクらの使っているユーロラックのFM音源は、「ソレいじっちゃダメ」っていうパラメーターが、わざわざノブで用意されているんです。 だからああいう音になるんです。建設的な破壊みたいな。
しかもgalcidがいじると、ほんとに今まで聞いた事のないような音になる。
それと、今回の作品もそうですが、打ち込みは一切やってません。即興です。 ベースラインもアナログシーケンサーでやってるので。だから再現不能です。
 
 

<良い音で大きな音で録音すると、音数も少なくてすむから良いですよ。(齋藤)>

 
吉野  : マジすか。ところでgalcidは重低音が半端じゃないですよね。僕がびっくりしたのがそこです。
齋藤  : 重低音に関しては工夫してます。具体的には、モニタースピーカーをジェネレックにして、快楽主義で録音してます。
普通、モニターはフラットな方がいいという定説がありますが、演奏してて面白くないので。
特にボクらのような即興では、その場のサウンドシステムが重要です。ですので、良い音のするスピーカーを使って楽しく演奏する。 そうすると、おのずと楽しい音が作れる。それと、良い音で大きな音で録音す ると、音数も少なくてすむから良いですよ。 ユーロラックは実は世の中で1番簡単なシンセサイザーですよ。ただ、なかなか 和音が出ませんw。だから、今回のトラックも全て単音ですよ。 後、低音に関してはベースラインよりもキックにこだわってますね。サイン波を足して、 しかもそのサイン波をピッチコントロールしてます。だからブウウンってメロっぽいキックになっているんです。
吉野  : う~ん。僕はどうしても一体型シンセのVCO-VCF-VCAって流れが頭に叩き込まれてるんで、そこらを自由に組み合わせるって、今の僕には逆に難しそう。後、和音がないのは今回の曲もそうですね。モニター環境は、僕にとって勉強になる話で、僕は普及機のヘッドフォン(ソニー・MDR-CD900ST)とモニタースピーカー(ヤマハ・MSP-5)で録音してますけど、低音が干渉し合って、なかなか難しいんです。
齋藤  : 吉野さんの場合、VCO-VCF-VCAの組み合わせをつくればいいんですよ ユーロラックで。MDR-CD900STも死ぬほど使って数本もってますけど、今は AIAIAIのを使ってます。 低音が干渉しちゃうって事は、モニター段階で低音が聞き取れてない可能性があります。アナライザー見ると一発ですよ。ボクはそ んな時は躊躇しないでどちらかをカットし ちゃいます。EQじゃなくって音ごとw。
吉野  : でもユーロラックでVCO-VCF-VCAだと、普通のモノシンセになっちゃうじゃないですか。
齋藤  : ユーロラックの素晴らしいところは、メーカーの垣根が無いって事です。だから全て違うメーカーのVCO-VCF-VCAで揃えたら、それだけでも自分だけのシンセがデザインできます。そこが1番の魅力ですね。VCOって言っても、各メーカーそれぞれ全く別物ですから。 (音楽用ソフトウェアの開発ツールであり、プログラミングでモジュラー環境を構築出来る) MAXやREAKTORでもいいんですけど、操作子をMIDIコンにアサインしなくちゃいけないので・・・ボクはMIDIが大嫌いなのでw。
吉野  : 齋藤さん、MIDI嫌いっぽいですよね、音が遅れますものね。確かにダイレクトな演奏感覚が欠けると思います。MIDIは邪魔でしょうか、やっぱり?
齋藤  : MIDIが登場した当時は素晴らしい規格でした。しかし、音源がマルチティンバーになると、もう音楽じゃなくなってくるほど伝達が遅くなったと思います。
吉野  : 僕の場合、MIDIの恩恵は未だに感じてます。
齋藤  : ボクもMIDI使ってますが、MIDIクロックだけです。パソコンも嫌いですね。起動するまでの間に、作る気なくなります。だから、パソコンはテレコ がわりに使っているだけですね。
吉野  : やっぱりMIDIは伝達ですか。僕のメイン機は、Prophet-600なんですが、 あれは一旦鍵盤の情報をMIDIに変換してから音源部に情報送るんで、打鍵から発音まで遅れますね。 Prophet-5は鍵盤からダイレクトにCV-GATEを送るので、 音が遅れないのは感じてます。(MIDI改造したProphet-5は鍵盤情報をCV-GATE で音源部に直で送り、音源部分に追加した別ユニットでMIDI信号を発生させます)。
齋藤  : そうですね。それに、そもそも鍵盤付いてないですからねユーロラックは。CVが基本ですし。当たり前ですけど、とにかく音が早い。後は打ち込みだと、予定調和の極みだから、途中で飽きちゃうんですよ。常にハプニングをもとめてます。
 
 

<ボクは「鬱込み」って呼んでますよw。(齋藤)>

 
吉野  : ライヴで打ち込み使うと現場での臨機応変な対応が困難ですものね。 後、事前の仕込みが面倒なのもあります。
齋藤  : ボクは「鬱込み」って呼んでますよw。あんなの精神的にも肉体的にも良いわけないですよ。音楽ってそんなもんじゃない。もっと衝動的でいいと思ってます。
吉野  : 「鬱込み」www。名言ですね。
齋藤  : 今回の作品は、Nitzer Ebb本人たちも聴いてよろこんでるみたいですよ。 Anne Hallが本人たちに聴かせたみたいで。
吉野  : 本人たちも喜んでたんですか! やっぱり汗だくでw?
齋藤  : 汗だくかどうかはわからないけどねw。彼らも、最近モジュラー取り入れてるしね。
吉野  : そうなんですか! 後、Underworldに聞かせたらBBCで放送されたと聞いてますけど・・・。やっぱり喜んでくださったんでしょうか?
Lena  : これはですね、リリースされてないということで、版権がNGになり、結局放送はされなかったのです。Karl本人はとても悔しがっていましたが、何回も打診してくれてました。 今はアーカイブに残る時代なので、それこそ、その辺は厳しいようですね。
吉野  : ああっ、しまった! 僕の仕事が遅れて、リリースが予定より延期となり、申し訳ないです。
齋藤  : なにしろ10数年頓挫して出せたアルバムですからねw。 あと、Nitzer EbbのボスのDaniel Millerがgalcidの大ファンだから、吉野さん 、MUTE から出しちゃえばシングルでw。
吉野  : 12インチ切りましょうかw、齋藤さん。でもB面必要ですよ?
齋藤 : 吉野さんの曲でいいでしょw。あと、ウチの子供達がず~っと「ヒョウタン総研インターナショナル」の「ひょうたんアクティビティ」を歌ってますね。
 
 

< 確かに音は男だと言われてますw。(Lena) >

 
吉野  : B面は田中さんで如何でしょう? どうですか、田中さん?
田中  : あらためまして齋藤さん、Lenaさんよろしくお願い致します。この度は ご参加ありがとうございます。この企画をサルベージしたLazyArtを共同で運営 しております。 個人活動では、TREMORELAという名義で活動してます。 お二人もよく御存じの関西モジュラー勢の皆さんとかともわりかし近しい感じです。
齋藤  : こちらこそありがとうございました。しかも、ちゃんと「齋藤」と言ってくれて、完全にポンコツ吉野さんと違う立派な方だと思いますw。
Lena  : こちらこそよろしくお願いいたします。
田中  : gaicidトラックのみのリリース、しかもMUTEで!なんてのが実現したら最高ですね。
齋藤  : 田中さんもダメ人間ですね! galcidですからw。
Lena  : wwww。galsidとか、いろいろ間違われてます。あるあるですw。
田中 : あ、すみませぬ。マッチョなサウンドもいけるってことでひとつ。
Lena  : 確かに音は男だと言われてますw。
齋藤  : galcidって、メチャクチャ、ホモっぽいじゃないですかw
田中  : 今回のアルバムの中で現行シンセサウンド鳴らしていたのが、このトラックだけだったので、他に合わせて少し調整させてもらったのですが、単体 リリースだと、先ほどおっしゃってた低音の魅力をもっと伝えられる形で出せるのは良いかな、と
齋藤  : ボクもそう思いましたね。みなさん、’80年代そのもので。
吉野  : ところで、今回のNitzer Ebbのカヴァーは、Lenaさんが決めたんですか?
Lena  : そうですね! 好きなんですよ。デトロイトのレーベル連中も聴いてたし、Richie Hawtinも良く掛けてました。
吉野  : おおー。ニューヨーク在住時代からですか!
Lena  : 確かに選曲やアレンジは悩みどころではありましたね。
吉野  : 悩むと思います。モジュラー即興でカヴァー曲を演奏するって画期的な事でしょう? 。身体に染み付いた曲じゃないとで出来ないですよね。
Lena  : どこまで低い声で寄せていくか、とか。あと、最初はもっと早いテンポで考えてました。その時のgalcidのライブ時のBPMが160~170だったので、そういうアプローチ はどうなのか?とか。
吉野  : Nitzer Ebbの「Let your Body Learn」。原曲が非常にテンポ早くて2分55秒で終わる曲なんですよね。
齋藤  : たしか180くらいじゃなかったっけ?BPM。
Lena  : そうそう。
吉野  : でも今回のカヴァーは8分54秒あると言う。
齋藤  : あれは、やっぱ即興なんでね。自分たちでは、3分くらいかなと思って録音してた。 あと、吉野さんをこまらせようと思ってw。
田中  : なるほど、近年のベースミュージック、Juke等の半分でテンポとるみたいなアプローチも感じられて、流石なモジュラー使いだと感服しました。
Lena  : ありがとうございます。嬉しいです!
齋藤  : 当時のNitzer Ebbの使ってた機材とか全部持っているけど、全く使わなかったね。
吉野  : 鉄棒とかも?
齋藤 : もちろん鉄棒にぶら下がりながら録音はしました。手にチョークもつけたし。でも、機材は最新ですね。
吉野  : ですね。音が正常進化している。
齋藤  : BPM=120が人間の鼓動に近いから心地いいとかいうけど、ボクは違うとおもうんだよね。個人差ってものがあるはずだよね。 あと、気圧の変化に弱い から(ボクは)その日によって変わる。
田中  : 天候の影響って大きいように感じます。
吉野  : 今日(2019年10月12日・超弩級の台風19号が関東を直撃中)はどうですか?
齋藤  : 本当にね、屋根吹き飛びそうになっている。家揺れてるし。ちょうど、今住んでるところの上空に台風の目がある。
Lena  : 天候は大きいです、今は直撃でも、大分落ち着いていますが。昨日はそわそわしてました。
田中  : 被害ないことを祈っております。
齋藤  : ありがとうございます。
 
 

< いつまでも新しいものを吸収できる人でいたい。(齋藤) >

 
Lena  : それにしても、この歌のディレクションは久師Pでしたが、ちょっと意外でした。
吉野  : どの辺が意外だったのですか?
Lena  : ノリノリ感が落ち着いてますからねw。温度感というか、テンポ感というか・・・。聴いてきたものとテンションが違いますからね。
吉野  : 確かに普段のgalcidよりテンポ遅いけど独特のグルーヴがあります。
Lena  : ちょっとそれますが、昨日、Nitzerの最近のライブを動画でみたんですよ。ちょっと残念な感じでした。
吉野  : 当時のアレンジのままでしたっけ?
Lena  : ヒット曲の宿命ではあるんだと思うのですが、ああいう曲は今相応のアレンジがあってもよいのかな、と。
齋藤  : 老いていた。大人になってしまっていた。
Lena  : 全然ドラム缶叩けなさそうな感じが・・・。
齋藤  : ボクらはパンクを通過していて、ノイズも、ディスコもテクノポップ も・・・。
大人になる=パンク精神喪失。スーツ来てステージに立ってるNitzer Ebb見たくなかった。シャウトもしてなかった。
Lena  : そういう意味で、高橋幸宏さんは一生大丈夫なんだろうな。。。
齋藤  : ボクは外観は老いても、いつまでも新しいものを吸収できる人でいたい。じゃなきゃ、音楽やってる意味なんて無いよね。
 
 

< 近藤さんのスタジオもボクらと同じで、モニターは快楽主義でしたよ。(齋藤) >

 
Lena  : この前もすごかったですよ、話逸れますが、 近藤等則さん。
吉野  : はい、パンクな人です。
Lena  : ですねー。
齋藤  : 一期一会と言ってくれたね。僕らより若かった。Lenaのお父さんと同じ 歳なのに、まるで同級生のように接してくれた。博識だし。すごいよ。 さすがオランダに18年も(その予定ではなかったらしいが)ずっと住んじゃっただけはあるよねw
吉野  : 博識って言うか、近藤等則氏、もともと京都大学の工学部金属工学科ですよね (後に文学部英米文学科に転科) 。Lenaさんのご実家も金属関係でしたっけ。
齋藤  : ああ、近藤さんの実家も、Lenaの実家も鍛冶屋さんだったんだよ。しか も二人とも四国出身という。爆笑したよね。
吉野  : やっぱり、近藤等則氏とgalcid、音が似ていると思うのは僕だけかな?
Lena  : そうなんですか!
吉野  : 近藤等則氏も基本はインプロですもんね。
齋藤  : そうですね。安心してセッションできた。しかし、音楽の打ち合わせとか全くしないで、いきなり回すから、ちょっとビックリしたw。
Lena  : エフェクターとか機材とかめちゃくちゃ詳しくてびっくりしました! いろいろDIYされてて。
齋藤  : 近藤さんのスタジオもボクらと同じで、モニターは快楽主義でしたよ。 音が良すぎ。 funktion oneやvoid超えてた。
田中 : 何を使われていたんでしょうか? 興味湧きますね。
齋藤 : 田中さん、ビックリしないでください・・・なんと近藤さんのスタジオモニターは・・・。
吉野  : えっ?
齋藤  : まさかのMackie。
田中  : まじっすか・・・。チューニングが天才的なんでしょうかね。
齋藤  : 数百万円の予算でいろいろ持って来て貰ったらしいんですけど、結局30 万円で収まったって喜んでた。 ミキサーもMackieだった。本当にいい音してた!
吉野  : はいっ! 僕もミキサーはMackieの402-VLZ3です!!
齋藤  : Mackieは好き嫌いわかれるけど、ボクは好きになった!
田中  : なるほど、機材屋泣かせですねw。
齋藤  : 最初、MIDASかと思ってた。それかNEVEか・・・。 で、ちゃんとみたらMackieだったw 。
 
 

< それが1番ですよ。自分のミミを信じてるんでしょうね。 (齋藤) >

 
田中  : しかし、ほんと感覚で判断されている感じですね。
齋藤  : それが1番ですよ。自分のミミを信じてるんでしょうね。 僕もさっき、吉野さんにアナライズしてみたら?って言ったけど、ボクはやらないですもんw
吉野  : 僕はついブランドに頼ってしまう。
齋藤  : それと真逆な人にあったんです。 あと、菊本忠男さん。TR808を作った。
吉野  : はい。webや本では存在を存じあげております。
齋藤 : 彼は、本物の音をフーリエ解析してシンセで模倣するんです。
田中 : はい、少し前(インタビュー時2019年10月)にSNSでも話題にされていた。
齋藤 : 冨田勲さんも近い感覚をもってて、オープンリールで録音した自然音を、低回転にして分析したそうです。
吉野  : 冨田さんは自然音のアナライズがシンセに行き着きましたものね。
齋藤  : これは、現代のように計算機で容易にフーリエ解析が出来た時代じゃないんで、とてもプリミティブとも言えますけどね。
吉野  : でも、真髄は同じですよね。
齋藤  : そうですね。菊本さんの場合、当時のオシロスコープは静止できなかったので、一瞬を目にやきつけ てやっていたそうです。だからあんな間違ったドラムやベースの音になってしまったと言ってました、TRやTBがw 。
吉野  : 往年のオシロスコープで静止画像欲しい時はポラロイドカメラで画面を撮影するんです。ドラムの波形のように高速で連続変化していく画像は写真がブレるので無理でした。 それに、TBは、後で潜在的な音の良さを発見した人が居るイメージですね。
齋藤  : どこにも無い音ですからね。それと、当時、TBやTRは叩き売り状態でしたから(Linn のせいで)。若いミュージシャンが買いやすかったんでしょう。 ボクもTBを7台もってましたけど、3000円で買いましたからw 。
吉野  : そこで気づくのが凄い。TBで普通のベースラインを普通に演奏させると、へなへなですから。
齋藤  : ボクは87年のシカゴで発生したACIDTRAXを聴いてショックを受けたので、すぐに買い集めましたね。たぶん、日本で最初に気づいたと思いますよ w。
吉野  : シカゴのACIDも、お金ないんでTB買って、使い方編み出したんですよね。確か。
齋藤  : だから、みんな意外とTB303/TR909って思ってるけど違うんですよ。
吉野  : えっ!
齋藤  : TB303/TR707なんですよ。
吉野  : そこで707が来る?
齋藤  : TR707はDINシンクが付いていたから303と同期できた。909は付いてない。808は当時でも高かった。606はキックが弱い。 だからみんな707なんです。
吉野  : 納得しました!
齋藤  : ちなみに、風見しんごの「涙のテイクアチャンス」も707ですw。
田中  : 707大好きです、軽いし。
齋藤  : ShannonのLet the music playは303と808ですね。そう、707軽いすよね。 727も良いすよ。この前、Jeff Milsに貸しましたよ。
田中  : おおー、909ではなく、というのがまた良いですね。
齋藤  : あ、もちろん909もその前に貸しましたw。
田中  : www。
齋藤  : 727は強烈すぎて、全てを持って行かれます。南国にw。リオのカーニバル状態ですよ。
田中  : 一時期、707,727どちらも所有していたのですが、ピッチ変えたくてサンプリングして使っていて、そのまま実機は売却してしまいまして・・・。
齋藤  : 田中さん、それは勿体無い! サーキットベンドすればピッチ簡単に変えられるのにw 。
 
 

< サビはLenaが絶叫してますよね。(齋藤) >

 
吉野  : いきなり話題変えますが、galcidの「Let your body Learn」ってヴォーカルも良いですよね。
齋藤  : あ、ヴォーカルは得意のリバースリバーブやりましたよ。
吉野  : 冒頭のあれですね。
齋藤  : サビはLenaが絶叫してますよね。コンデンサーマイク壊れるかとおもいました。
吉野  : しかも最後のリリックで「ミシマ」と聞き取れる。あれは、どんな内容なんでしょうか?
Lena  : 三島由紀夫の海外インタビューの内容です。ソングタイトルとこのタイトな音作りから、なぜか三島由紀夫が思い浮かびました。
吉野  : マジすか!。確かに、そこはかとなく漂う、筋肉質な雰囲気が三島由紀夫ですよね。 それで、演説内容、大丈夫ですか? 日本語訳すると気まずいとか?
Lena  : いえいえ、そんな内容でもないです。
田中  : モジュラーサウンドもフェイザー処理等が随所に散りばめられいたり、 と聞きどころ満載だと思ったのですが、ヴォーカル処理も非常に効果的で曲のインパクトをより高めているな、と。
齋藤  : 田中さん、嬉しいですよ。気が付いてくれて。フェイザーにはMutronの Bi-Phase、フランジャー/コーラスには   RolandのSBF-325を使ってますよ。
田中  : なるほど!銘機が!
吉野  : 凄い・・・・。
 
 

(写真:galcidの機材群)
 
齋藤  : 録音は即興だけど、パラで録ってるんで、ミックスの時にもアウトボードでエフェクトしてますね。ハードで。
田中  : モジュラーが基本モノラルだとおもうので、ボーカルを含めて、時折現れるステレオ処理の効果も非常に聞き応えがありました。
齋藤  : ありがとうございます。モジュラーやってる人たちって、あまりステレオ意識している人がいないんで。
田中  : やはり、ある程度はパラで録音されているのですね。ライブだとモノでどーんのほうが、一見迫力ありますからね。
齋藤  : そうかもしれないですね。でも、ボクたちの使っているユーロラックのミキサーはCVでパンをコントロールできるので、ランダマイザーやLFOを使ってバリバリに振ってますよ。人間にできなさそうな速さと正確さでw
吉野  : そんな技が使われているとは!
 
 

 < galcidの秘密の一つをバラしますと・・・・(斎藤) >

 
齋藤  : あと、galcidの秘密の一つをバラしますと・・・・。
田中  : 以前SNS上で拝見したのですがWMDのミキサー使われているのでしたっけ?
齋藤  : 必ずUREI1620を通過させます。あ、WMDも使ってますよ。
田中  : UREIマストなんですね!
齋藤  : 最後に2ミックスのものを通すだけで・・・・S/Nが増えるんですよ。そうすると、良いヤレ具合になるんです。
吉野  : あ、UREIってコンプ掛かりません?
齋藤  : ディスコミキサーなんで掛かりませんね。
吉野  : しまった!。嘘を信じてた。
齋藤  : 嘘ですよあんなのw。 あと、もう一つの秘密は、ボクが中学生の時に自作した安っすいフォーンケーブルを使ってます。これ使うといきなり当時の音になるんですよw。 気のせいだと思うんですけど。良いケーブルほど、ビデオっぽくなるんです。悪いケー ブルほどフィルムっぽくなる。オカルトです w。
田中  : 実際効果はありそうですね、オカルトではなく。
吉野  : はい、それは一応理屈あります。オーディオ信号も交流なんでケーブルのインピーダンスが効いてくるんです。 インピーダンスって、あえて正確ではなく雑な言い方すれば、周波数帯域によって伝導率が少し変化すると捉えて下 されば。
田中  : ヴィンテージケーブルって枠あるんでしたっけ? 詳しくないのですが。
齋藤  : いや、ボクも詳しくないのですが、それこそ高級メーカーのケーブルとか使い倒しましたが、伝導率が良すぎて、そのまんまの音しか出ないのは確かです。 その点、劣悪ケーブルの方が音が変わるという。
吉野  : じゃあ、ケーブルもエフェクターの一種ですね。
齋藤  : かっこ良く言えばそうですけど、なにしろ自作ですからねw。40年も前の。一本100 円くらいです。
吉野  : ハンダ付けで作ったと言う。安かったですもん自作すれば。当時の中学生にとってマストアイテムだったような気がします。
齋藤  : そうなんです。40本ストックありますよ。1本1万で譲りますよ。
吉野  : えっ!!
田中  : あれ? ビジネス始まってるwww。
齋藤  : 安いでしょ?w。
吉野  : www。
齋藤  : このビジネスメソッドは・・・・w。
吉野  : いや~ん。まぁ、いろんな人とか、いろんなショップがやってますけど。ともあれ、そのケーブルはパッチングにも使ってるんですよね?
齋藤  : いや、フォーンケーブルはユーロラックには使えないんです。ユーロ ラックのは3.5mm のミニコードだから。ユーロラックの最終出口に使ってます。
田中  : 最終で音に色つけるイメージですね。
齋藤  : そうです。
吉野  : すみません。うっかりボケた発言してしまいました。パッチングケーブルの色には拘りがありますか?
齋藤  : あります。人間を模倣しているんです。
吉野  : えっ!!!
齋藤  : 赤=動脈 青=静脈 黄色=肉 黒=髪の毛 緑=胆嚢 みたいに 。
吉野  : パッチングの時、分かりやすいっちゃ分かり易いですよね。僕は最近、 運動不足で黄色のケーブルが無駄に増えてます。
齋藤  : CVは赤、GATEは青みたいにしてますよ。
吉野  : なるほど!
齋藤  : あと、シグナル信号とオーディオ信号も分けてます。
田中  : モジュラー動画みていると、そういうカラーリングの拘りにも興味がわきますね。
吉野  : モジュールの総数って幾つくらいありますか?
Lena  : それは、持ってる数ってことですか??
吉野  : そうです。
齋藤  : 数え切れませんね。
田中  : ですよねー。
吉野  : 了解です。
Lena  : 今、作ってるセットは数十個ですね。
齋藤  : レギュラーで使っているのはココに載ってます。
 
https://www.digimart.net/magazine/article/2019101103800.html? fbclid=IwAR0Y5IaKduGIGHMhuVyV3GPxPifbN_fUrWP9s7QI5AEjmoD- eDuLjhRNZuA
 

     
Lena  : あと、lenacidのセットとスタジオに置いてあるセットが別にあります。
吉野  : ユーロラックはデジアナくさいって言う人も居ますが、galcidを聞くとそういう印象は受けないですね。
齋藤  : もちろんSYSTEM100mも現役で、今度ベルリンのForce incやミルプラトーから出るやつにはヴィンテージをたくさん使ってますよ。
吉野  : おお、そこらも接続できるのがモジュラーの良い所ですね!
齋藤  : ユーロラックの世界では、すでにデジタルもアナログも同じようなスペックに近づきました。なぜなら、ガレージメーカーが多いので、大手メーカーが守らなければいけない安全基準とかを完全に無視して作ってるから。デ ジタルでも、アナログなみに幅が広いですよ。
吉野  : 結構、自由奔放に自作なさる人いますよね。ICの定格無視とか。
齋藤  : そうそう。電源や発振した時スピーカー飛ばさないようにとか、そんなの気にしてないですよね、ユーロラックは。
吉野  : 安全基準は無茶苦茶に厳しく作ってあるので、特に音楽用のスピーカーは案外飛ばないですもんね。
Lena  : そうですね。
 
 

<ベルリンは面白いけどビジネスにならない(Lena)>

 
吉野  : 話を戻しますけど、ワールドツアーはどこを巡りました?
Lena  : 去年ですよね! モントリオール、スイス、ベルリンです。そのあとはアジアが多かったです。
吉野  : ベルリンが興味深いですね。
Lena  : ベルリンは面白いですね、一発でわかってくれる、というか。
吉野  : Kraftwerkの国は違う!
Lena  : しかし、ベルリンはビジネスにならん。これはみんな言ってますね、 ベルリンは面白いけどビジネスにならないと。 スイスは最高にビジネスになりますが、物価が驚くほど高いです。サンドイッチが2千円。
吉野  : えっ!!!!
Lena  : 平均時給2800円の国ですしね。
齋藤  : スイス人「日本のランチ安っす~!」しかもスイスではローディーが乗ってきた車が、ポルシェ・カイエン。
吉野  : 凄いなスイス。幾らSUVとは言え、カイエンじゃ荷物が・・。
Lena  : モジュラーを前方のトランクに入れたのは初めてでしたw。
吉野  : あと、スイス人は、田中さんが大阪で主催されてるテクノイベントの「wells」にも毎回何人か来ます。テクノが好きなのかもしれませんね。
田中  : あ、なんか無茶ブリ感が・・・。
吉野  : す、すみません・・・。調子に乗ってフカしてしまいました(汗)。
Lena  : スイスは受け入れ体制ができてますね。 そして、国でもドイツ圏フラ ンス圏とが別れている。
田中  : クラシックのイメージが強いですが、音楽自体が盛んなのですかね、 スイス。
Lena  : スイスは前衛もロックも、なんでもありな雰囲気があります!! そして、 やっぱりハコのサウンドが抜群にいい。
齋藤  : 単純に電圧2倍だし。
Lena  : 知らないものを受け入れる人種だな、と思いました。
齋藤  : そこが島国とは違うところだよね。
田中  : なるほど。スイスの音楽、ちゃんと調べて見ます。
吉野  : 僕も全然知らないので、調べて見ます。
Lena  : そして、スイスには、たまに信じられないくらい金持ちの人がいます。
https://www.instagram.com/p/BnbrS_wAk8X/
これ、スイスのお金持ちの人のコレクションです!これが3レーンありました!
 
 

吉野  : あと、アジアの人も耳が肥えてるそうですね。
Lena  : 中国はバブルっぽいです。
吉野  : 都市部の発展は日本を追い抜かしそうな勢いらしいですね。
Lena   : そうみたいですね。 中国はクラブが増えてきて、しかもサウンドシステムに力を入れている感じです。どこもかしこもvoidかfunktion one。
吉野  : まさにバブル!。
Lena  : しかも、夜出歩く文化があるので、平日のモジュラーのワークショップイベントも300 人くらい来ましたw。
吉野  : それは盛り上がる。齋藤さん、ケーブル売るなら中国ですよ!
齋藤  : そうですねw売らないけどw。
Lena  : すみません!ネットの調子が悪い!
吉野  : あ、台風ですものね。ここらで締めましょうか。
Lena  : ありがとうございます~~!
田中 : 長時間ありがとうございました!
Lena  : ありがとうございました!!
吉野  : こちらこそ、ありがとうございました。では、おやすみなさい!
Lena  : おやすみなさい!!
吉野  : では、今回のインタビューはこれにて終了しましょう。
(文責:吉野 太郎)

FUTURETRON RECYCLER
V.A


 

【品番】LACA-10005
【発売日】2019.9.25
【価格】3,500円(+税)

【収録曲】
[Disc 1]
01.愛の残り火 (HUMAN LEAGUE) / 港町YOKO
02.愛は吐息のように (BERLIN) / HONEY MANNIE
03.Planet Earth (DURAN DURAN) / Kaoru175
04.希望の河 (YMO) / アホロートル
05.鏡の中の十月 (小池玉緒) / 桂小ゆかりとノーティーボーイズ
06.UDNACE (URBAN DANCE) / A.C.E. + Shinobu NARITA (UD ZERO) feautring Kengo KOYAMA
07.Music Non Stop (KRAFTWERK) / MAGNAROID
08.ひょうたんアクティビティ (KRAFTWERK) / ヒョウタン総研インターナショナル
09.釈迦 (筋肉少女帯) / Y&M★O
10.いとをしい世界 (ポンポンダリア) / ハセベノヴコ

[Disc 2]
01.Into The Groove (MADONNA) / CYBERSHOTS!!!
02.熱視線 (安全地帯) / 中将タカノリ + TomonaoTanaka (TREMORELA)
03.Heavy Mental Rock (AB'S) / 松前公高
04.Poptones (PIL) / ペイズリーピジャマに しいのあみ
05.Let Your Body Learn (NITZER EBB) / galcid
06.Spiritual Cramp (CHRISTIAN DEATH) / ド・ロドロシテル (掟ポルシェ)
07.東京ブロンクス (いとうせいこう+タイニーパンクス) / 松永天馬 et おおくぼけい
08.セイレーン (ZELDA) / MANIAX#2
09.ふたりのイエスタデイ (STRAWBERRY SWITCHBLADE) / サイボーグ80ズ アンド 由花