FUTURETRON RECYCLER リリース記念 インタビュー 04
松前公高 ~



吉野 : 今回はFUTURETRON RECYCLER 参加者インタビューとして、AB’sの「Heavy Mental Rock」をカヴァーなさった松前公高さんにお話を伺いたいと思います。松前さん、よろしくお願いします。
 
 
松前 : よろしくお願いします
 
 
吉野 : さて、松前さんがAB’sをカヴァーなさると聞いて、最初の僕は「??」だったんですが、少し調べてぶっ飛びました。本当に手練れのミュージシャンが、バカテク披露じゃなく、さりげなく良い曲を演奏しています。同時期の僕はテクノ/ニューウェイヴ/パンク一直線だったのですが。松前さんはリアルタイムで、お聴ききだったのでしょうか?
 
 
松前 : ほんの少し後から聴きました。70年代はテクノとかプログレとか大好きだったんだけど、、、80年代は、ニューウェーブからその流れでインダストリアルとかノイズまでいって。プログレからいくと、そっちとは逆方向っていうんですかね?笑プログレのテクニカルな方向、例えば、UKやブルーフォード、ブランドXからのフュージョン、クロスオーバー方向も好きで、、笑。更にクロスオーバー聴くとAORまでいっちゃう。どっちも聴いてました。
 
 
吉野 : プログレと言っても、Can、NEU!みたいな後年のテクノ/ニューウェイヴ直結系からVan Der Graaf Generator(ロバート・フィリップがゲスト参加)みたいなプログレ中のプログレもありますよね、ELPみたいなシンセ中心の華やかなプログレは後のフュージョンの元祖かもしれません。そう考えるとプログレって括りは多彩なジャンルを内包しますね。
 
 
松前 : まあ、テクノはやる音楽、フュージョンは聞く音楽ってはっきりわけていましたけど、、そんな演奏系の人間でもないし、、そういう中で、AB’Sと出会ったわけです。それまでインストものばかりだったので、あの程よいクロスオーバー感に、歌モノに入った感じが心地良くて。当時流行ってたモロAORも、スタジオミュージシャンがやってましたが、AB’Sは日本の、80年代の、都会の雰囲気っていうんですか、それが盛り込まれてた。ちょうど僕も大阪の田舎から、東京に出てきた頃だったので、東京的なものを、関西人としてて否定しつつも、実はむっちゃ憧れて、それでこっそりきいてました(笑)。
 
 
吉野 : 僕も兵庫県の加古川市出身で、1995年に上京したので解ります。あの東京のキラキラ感。「Heavy Mental Rock」は、歌詞がまた良いですよね。女の子をナンパする内容なんですが、決して嫌味や下衆い雰囲気がなくて、凄く上品です。でも、関西人は、ああいう雰囲気に対しては、対外的には「ツッコミ所がないやん」とか言っちゃうんですよね。例え内心で憧れて居たとしても。
 

松前 : そんな中で時代的にもAB’Sが3RDアルバムでドラムマシン的なサウンドも導入してて、この曲、、、テクノやん!笑 みたいに感じて。もちろんエッセンスとしてね。そこにも、AB’S的なコード、サウンド、メロディ、歌詞、、がのっかってるわけですよ。それがたまらなかった。
 
 
吉野 : その視点からの選曲でしたか。松前さんのAB’S愛が伝わるイイ話です。
 


松前 : 今回、こういうアルバムに参加させてもらうにあたって、、80年代のシンセ系の音楽だと、何がいいかな~~??と考えていたんだけど。
おそらく、この方向からのアプローチは、今回のメンツでは、他にいないだろうと思って、この曲をカバーしたい!!っていう事になりました。

 

吉野 : あの選曲はみんなの意表を突いてますね。おかげでアルバムが良い意味で、とっ散らかって、変な話ですけど、プロデューサーの僕の意図にズバりとハマりました。有難うございます!
 
 
松前 : 自分の話として80年代を語らせてもらうと、高校2年が80年。82年に大学に出て行ったんです。大阪も四条畷という京都や奈良に近い山の方に住んでたし、もう、東京、大都会がすごくて、、。いろいろそんな経験を東京でした時期でしたから。自分の方向性、として、インディーズできどりっこで活動して、岸野雄一たちとコンスタンスタワーズ、、そして山口優とエキスポつくって。そういう自分の音楽性が明確に自分でもわかりだしていた時期だったので、、
AB'Sやその他、AORやフュージョンは完全に逆の方向なんですよね。
でも、その大都会で、ちょっと軽い歌詞の様なあの世界にもものすごく憧れてて・・・・。そのバランスがとてもつらくもあり、楽しくもあったですね。
 
 
吉野 : はい、僕は’87年~’90年に札幌でパンク~ニュウェイヴ系のバンドやってたんですが、フロアが見事に男臭いと言う。AOR、フュージョンはアマチュアのライヴでも上品で綺麗なお姉さん来てましたね。「なんやねんコレは!」と思いながらも、仕方ないのは分かってたという。
 

松前 : 幸い、その後、80年代も最後の最後、、。ゲーム音楽にいろいろ関わる様になった所で、セガのゲーム音楽を演奏する公式のバンド(S.S.T.BAND)を僕が仕切って、、そこでやりたかったフュージョンは、出来ました。笑
しかもゲーム音楽ということで、打ち込みを入れたフュージョン!!。笑
そういうのもあって、その後もずっと、ダークなテクノも好きだし、爽やかなフュージョンも好き~~!!って。当時あまりマニアックには深く掘り下げてなかったので、結構後になってから、当時のマニアックなAORのサウンドは、いろいろ収集したりしましたよ。笑
 
 
吉野 : 例えばどんなAORを収集なさったのか、興味ありますね。
 
 
松前 : ジェイグレイドン関連のあまり売れなかったものとか、、。笑
まあ、そんな訳で、憧れて聴いていた音楽をカバーする、ってとっても恐れ多いのと、いや単に仕事みたいにテクノのアーティストをリミックスするのは面白くないし、何か挑戦してみようって事で。
他のAB’sの曲は完全にテク、、いりますがこの曲なら打ち込みで絶対表現出来る!!って思いました。
 
 
吉野 : なるほど!!。今回、AB’sが所属しているワーナーにメッセージ送ったら、メンバーの2人が是非アルバム欲しいと。ワーナー担当者様の粋な計らいで、サンプル送りました。ちょっとだけ教えてくれたのですが、メンバーの芳野さん曰く「誰がカヴァーするかと思ったら、松前くんかー。」と言うことで。ちょうどAB’sの再始動に何とか間に合って、華を添える形となり、僕もホッとしました。メンバーとは御面識がおありなのでしょうか?
 
 
松前 : いえいえ。。憧れの方です!!
 
吉野 : それは、かなり緊張しますよね。僕なら絶対にビビります!
 
 
松前 : ただ、歌モノなので、、それをどうするか?
おしりかじり虫とか、その他、いろいろ子供向けの雰囲気の音楽で、加工したり、ヘタウマなボーカルはやった事はありましたが、ここまで、マジにうたわなくちゃいけないのは実は人生初の歌モノ挑戦だったんです。
 
 
吉野 : はい、松前さんが本気の歌モノに挑戦すると、お伺いした時に感じた一抹の不安感(笑)は良く記憶しております。でも、凄く良い声ですよね。いや、お世辞じゃなくて。
 
 
松前 : ありがとう。そんな訳で、がんばりました。 テクノ風アレンジになるので、ボーカルも、ボコーダーとか入れて、多少は雰囲気変えられるかな?と思ったり。シンセや打ち込みはもう楽しくカバーしました。今までもリミックスの仕事はしたことあったけど、基本あまりいじらないで、原曲を大事にした上で自分の色入れるのが好きなんです。
なので、今回も基本的な部分は全く崩さずにカバーっていう感じですね。
家でほとんどソフトシンセで作りました。あとハードウェアだとKORG MS-20をかなり使ってます。後半のシンセのグチャグチャなソロも全部MS-20の音ですね。
 
 
吉野 : あのMS-20の音はすぐ解りましたよ!、後、 ソフトシンセは何を使われたのでしょうか
 
 
松前 : いろいろつかってますが、多くの方が使われてるのとかわらないですよ
とりあえず、いろいろあつめてるので。その中から、良さそうなのを選んでその都度つかってます。
SpectrasonicsのOmnisphereとかRob Papenの製品とかサンプル系はNIのKONTAKTですね。ボコーダーはこの時は、iZotopeのVocal Synth2がちょうど出たばっかりだったので、全てそれを使ってます。なので厳密には、ボコーダーじゃなくて、Talkboxとかシンセ合成されたようなボイスがたくさん混ざってるんですね!!歌のメインの部分も、自分の声2つと、ボコーダーの音も小さく混ぜています。
 
 
吉野 : Voの処理は教えてくださるまで、気づかなかったです!でも全ての音色に松前さんの味が出てますよね。。松前さんと言えば、MS-20がトレードマークですが、このシンセにこだわる理由を教えてくだされば嬉しいです。
 
 
松前 : 単純に音が好きなんです。エキスポのアルバムを作る時にずっとつかってたのですごく慣れてたし。あとベンド幅が大きく設定出来る事、レゾナンス付きのローパス、ハイパスが2つ並んでいる事が大きな理由ですね。でも自分で手に入れたのは中古で随分後になってからなんですよ。それまで友人のをずっと使ってました。
故障したらもう代わりがなくなる、、って思って結局、5台までキープで持ってましたが。なんかその後再発されましたからねえ。とりあえず一生困る事はないと思います。他のビンテージシンセは全部、もう手放しました。
ソフトウェア音源も最初はいろいろ言われてましたが、もはや、便利さ、小ささを考えたら、ハードウェア使う必要ないと思っています。そんな中でもやっぱりMS-20だけは、どうしてもハードで使いたいですね。
 
 

FUTURETRON RECYCLER
V.A


 

【品番】LACA-10005
【発売日】2019.9.25
【価格】3,500円(+税)

【収録曲】
[Disc 1]
01.愛の残り火 (HUMAN LEAGUE) / 港町YOKO
02.愛は吐息のように (BERLIN) / HONEY MANNIE
03.Planet Earth (DURAN DURAN) / Kaoru175
04.希望の河 (YMO) / アホロートル
05.鏡の中の十月 (小池玉緒) / 桂小ゆかりとノーティーボーイズ
06.UDNACE (URBAN DANCE) / A.C.E. + Shinobu NARITA (UD ZERO) feautring Kengo KOYAMA
07.Music Non Stop (KRAFTWERK) / MAGNAROID
08.ひょうたんアクティビティ (KRAFTWERK) / ヒョウタン総研インターナショナル
09.釈迦 (筋肉少女帯) / Y&M★O
10.いとをしい世界 (ポンポンダリア) / ハセベノヴコ

[Disc 2]
01.Into The Groove (MADONNA) / CYBERSHOTS!!!
02.熱視線 (安全地帯) / 中将タカノリ + TomonaoTanaka (TREMORELA)
03.Heavy Mental Rock (AB'S) / 松前公高
04.Poptones (PIL) / ペイズリーピジャマに しいのあみ
05.Let Your Body Learn (NITZER EBB) / galcid
06.Spiritual Cramp (CHRISTIAN DEATH) / ド・ロドロシテル (掟ポルシェ)
07.東京ブロンクス (いとうせいこう+タイニーパンクス) / 松永天馬 et おおくぼけい
08.セイレーン (ZELDA) / MANIAX#2
09.ふたりのイエスタデイ (STRAWBERRY SWITCHBLADE) / サイボーグ80ズ アンド 由花